世界の食文化に根付くAmaranthus
【メキシコのAmaranthus】
Amaranthusは世界の各地で、それぞれの文化と深く結びついた形で食されてきました。
メキシコでは、スペイン語で「喜び」を意味する「alegría(アレグリア)」というお菓子が作られています。
ポップさせたアマランサスの種子を蜂蜜や糖蜜で固めたこの菓子は、アステカ時代に神への捧げ物として作られた「tzoalli」の系譜を引き継ぐものとも言われています。
alegríaの主要な産地は、メキシコシティのソチミルコ区にあるサンティアゴ・トゥリエウアルコという集落であり、現在においても約200の家族が伝統的な製法でこの菓子を作り続けています。
2016年にはメキシコシティの無形文化遺産にも認定されました。
また、死者の日(ディア・デ・ロス・ムエルトス)の時期には頭蓋骨の形に成形されたalegríaが店頭に並び、今もなお祭礼と結びついた菓子として生き続けています。
【インドのAmaranthus】
インドでは、アマランサスは「ラジギラ(rajgira)」あるいは「ラムダナ(ramdana)——ラーマ神の穀物——」という名で呼ばれ、断食の季節に欠かせない食物として大切にされてきました。
種子をポップコーンのようにはじけさせて蜂蜜と混ぜ合わせた「laddoos(ラドゥース)」という冬のお菓子として親しまれています。
また、アーユルヴェーダの古典『チャラカ・サンヒター』では、Amaranthusはスープに適した野菜(Supya shaka)として記され、野菜(shaka varga)グループに分類されています。
サンスクリット語では種に応じて「マーリシャ(Maarisha)」とも「タンドゥリヤ(Tanduliya)」とも呼ばれ、それぞれの名のもとで異なる薬効が語り継がれてきました。
【カリブ海、アフリカのAmaranthus】
カリブ海の多くの島々でも「callaloo(カラルー)」というコクのある朝食の野菜として親しまれています。
また、アフリカ各地でも葉物野菜として食文化に根付き、ボツワナでは「morug(モルグ)」と呼ばれる主食の緑黄色野菜として食卓に並べられます。
未来の作物としてのAmaranthus
現在、アマランサスの主要な栽培地はインド・ネパールのヒマラヤ山麓、中国、そして東アフリカへと広がっています。
その起源地である中南米でも再評価の機運が高まり、栽培が息を吹き替えしているそうです。
種子のタンパク質含有量は15~16%で、小麦やトウモロコシ、コメといった主要穀物と比べても遜色のない水準にあります。
8,000年以上前に中央アメリカとアンデスの大地で芽吹き、アステカとマヤの両文明において儀礼と食卓を支え、スペインの征服によって一度は「幻の作物」へと追いやられたAmaranthusという種は、農民たちの手によってひそかに受け継がれていきました。
乾燥させた後も色褪せることなく輝き続けるその姿は、「不滅」という花言葉を表している用にも見え、属名の語源が示す通りAmaranthusは何百年もの沈黙を経てもなお「しぼまなかった」植物と言えるかもしれません。


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