Aster tataricusの名の由来
属名の「Aster」はラテン語で「星」を意味し、その頭花の形に由来します。
種小名の「tataricus」は、かつてヨーロッパの地図製作者たちが「タタール」と呼んだ広大な地域――シベリア、モンゴル、中国北部から朝鮮半島にかけての広がり――を指していて、この植物の原産地域をそのまま名前に刻んでいます。
日本においてこの花は、「ジュウゴヤソウ(十五夜草)」や「オモイグサ(思い草)」という別名も持ちます。
秋の名月、満月の夜に咲く花として人々の感情と結びついてきたことが、これらの呼び名からうかがえます。
中国ではその根が「紫菀(しおん)」の名称で記録されており、古典『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』においても「紫丸(紫菀)」の名で記され、後世へと受け継がれていきました。
唐代・宋代の『日華子本草(にっかしほんぞう)』には、それ以前には見られなかった様々な用途についての記述が加えられており、この植物が長い歳月をかけて人々に観察・記録されてきたことを示しています。
Aster tataricusの利用の記録
中国・朝鮮半島・日本など、一部のアジア諸国では5月から6月に収穫される若い苗や柔らかい茎、葉が食用として利用されてきた記録があります。
韓国では「ケミチウィ(개미취)」と呼ばれ、伝統的な韓国料理に使われる人気の山菜の一つとして根付いています。
自然染色においては鉄との相性が良く、媒染剤として使用した際に、深みのあるオリーブグリーンやグレーがかった黄色といった、シオンに由来する独特の色合いが生み出されてきました。
そこからは、花の紫とは異なるこの植物が持つ別の表情が現れています。
秋の終わりに咲く花としてのAster
Aster属には約180種が存在しますが、そのうち1種を除いてほぼすべてがユーラシアの大地を原産としています。
晩秋の野で、他の花々が次々と姿を消していく中、シオンはひとり星のような花を開き続けます。
花粉媒介者にとって遅い季節の貴重な蜜源となるその姿は、秋の終わりを惜しむかのようであり、まもなく来る冬を静かに受け入れているようでもあります。
「思い草」という別名が示すように、シオンはその花を見る者に、故人や思い出の場所を深く想わせる力を持っているのかもしれません。


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