人類史におけるPassifloraの登場からリンネまで
1609年、イタリアの教会歴史家ジャコモ・ボシオ(Giacomo Bosio)は、一枚の絵画と乾燥標本を眺めながら、トケイソウの花の各部位にキリストの磔刑の様子を読み解いたと言われています。
放射状に広がるコロナのフィラメントは、イエスがかぶせられた茨の冠。
10枚の花被は、ユダとペテロを除いた10人の忠実な使徒。
3本に分かれた柱頭は、十字架に打ちつけられた3本の釘。
5本の雄蕊は、キリストの5つの傷。
葉の尖った先端は聖槍、「ロンギヌスの槍」。
そして植物体に巻きつく巻きひげは鞭を表すとされました。
スペイン人の間でこの植物は「La Flor de las cinco Llagas(五つの傷を持つ花)」と呼ばれ、やがて「Flos Passionis(受難の花)」の名とともにその名はヨーロッパ全土に広がっていきました。
同じ年、イタリアのフィレンツェでもトケイソウは永遠に記録されようとしていました。
メディチ家の宮廷画家ヤコポ・リゴッツィ(Jacopo Ligozzi)、彼は自然界の題材を精密に描写する「自然の挿絵画家(illustratore di naturalia)」として知られる人物でした。
彼が描いたトケイソウのテンペラ画には1609という日付が記され、今もフィレンツェ国立図書館に眠っています。
乾燥した標本をもとに描かれたとみられるこの絵には、写実的な部分と想像による補完が混在していますが、受難の花が紙の上に初めて留められた瞬間のひとつとして、静かに残り続けています。
それから80年後の1689年、フランスの修道士であり植物学者であったシャルル・プルミエ(Charles Plumier)は、フランス政府の命によりアンティル諸島(西インド諸島)へ出発し、多くのPassifloraの精密な図解を残しました。
後にスウェーデンの植物学者、カール・フォン・リンネはプルミエが記述した多くの属をほぼそのまま受け継ぎ、Passifloraもその体系の中に組み込まれていきました。
Passifloraの身体の秘密
Passiflora 属はトケイソウ科(Passifloraceae)に属し、500種から600種以上を擁します。
葉は左右交互につく互生、螺旋状に配列し、全縁のものから掌状に深く裂けるものまで、種によって様々な形が存在します。
一つの植物が異なる形の葉を同時に持つこともあります。
そのような葉の形の多様性は、ヘリコニウス(Heliconius)という熱帯に生きる蝶により産み付けられた卵の重さへの順応の姿と言われています。
葉柄には「花外蜜腺(extrafloral nectaries)」と呼ばれる、昆虫を引き寄せるために、花の外側で蜜を分泌する器官があります。
そして、花の構造は植物界でも類を見ないほど精巧と言われています。
Passifloraの花に浮かぶ細工について
Passiflora 属はトケイソウ科(Passifloraceae)に属し、500種から600種以上を擁します。
葉は左右交互につく互生、螺旋状に配列し、全縁のものから掌状に深く裂けるものまで、種によって様々な形が存在します。
一つの植物が異なる形の葉を同時に持つこともあります。
そのような葉の形の多様性は、ヘリコニウス(Heliconius)という熱帯に生きる蝶により産み付けられた卵の重さへの順応の姿と言われています。
葉柄には「花外蜜腺(extrafloral nectaries)」と呼ばれる、昆虫を引き寄せるために、花の外側で蜜を分泌する器官があります。
そして、花の構造は植物界でも類を見ないほど精巧と言われています。
【Passifloraの花に浮かぶ細工について】
5枚の萼片と5枚の花弁からなる華やかな花被を背景に、放射状のフィラメントが広がり輪を成す——花弁に影を落とすその器官は、「コロナ」という名称を持ちます。
コロナは外側から中心に向かって、同心円状に複数の層が折り重なる構造を持っています。
最も外側に位置する長い糸状のフィラメントを「ラジイ(radii)」と、その内側で密に並ぶ短い方は「パリ(pali)」と呼ばれます。
さらにその内側を膜状の「オペルクルム(operculum)」が蜜室の上へ曲がり込み、その下の「ライメン(limen)」と呼ばれる器官とともに、蜜室を外界から守っています。
最内部ではリング状の「アニュラス(annulus)」が蜜室を上室と内室に区切り、不正な訪問者による蜜の盗取を防いでいます。
この幾重にも重なった精巧な構造が、宣教師の目には茨の冠と映りました。
そしてコロナの中央に伸びる柱の頂きに、5本の雄蕊と、3本の花柱と柱頭から成る雌蕊が一体となって載っています。
花柱は、蜜を求めてやってきた者の方向へと静かに身を傾けます。
そうして、蜜を求めて花の奥へ入り込んだ昆虫や鳥は、自然に雄蕊と柱頭の両方に触れることができるよう、花はあらかじめ設えているのです。
花は役目を終えたのち、やがて果実が生まれます。
果実は液果で、その内部では甘酸っぱく芳しい香りのある果肉が黒く硬い種子を静かに抱いています。
この植物の生命力はあまりに旺盛で、庭に植えた者がその勢いに圧倒されることもあるといいます。
加えて、 その大半はつる性の硬い茎を持つ木本植物、あるいは短命の草本植物であり、茎の葉腋から伸びる巻きひげが、触れたものに絡みつきながら上へ上へとよじ登っていきます。
Passifloraの中でもscandensという種は「這い上がる」という意味を持ち、その名がその姿をそのまま体現するように生きています。

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